教育デザイン研究室(旧STEAM教育研究室)
【担当教員】岩間徳兼(准教授)、石川奈保子(准教授)
科学に基づいて教育をデザインする
教育は各時代において社会を担う人材を育てるという大きな役割を担ってきました。これからの時代においては、経済発展や社会問題の解決のため、これまで以上に科学に関する知識・技術に対する理解や利用が必要となります。そして、そのような社会で貢献できる人材を育てる上で、いかにして科学に関する知識や技術を教えるか、また、いかにして科学的な知識や技術を教育に生かすかは重要な問いとなります。それらの問いに関連する実際の教育上の問題を解決することを目指して、教育デザイン研究室では、心理学、教育工学、教育測定学といった学問領域の考え方をベースに、効果的、効率的、魅力的な学習方法、教育方法を考え、実証を通じた提案を行っていきます。研究テーマは、計量的手法に基づく評価・測定法、統計教育、学習・教授の設計等です。
研究テーマ
1.教育を評価するための適切なものさしを作り、適切な使い方を考える
教育効果や学習者の習得状況を把握するための方法としてテストがあります。誰しも一度は何らかのテストを受けたことがあるでしょう。確認テスト、定期考査、入学試験、学力調査の試験など、世の中にはたくさんの試験が存在し、その結果が個人の将来を左右したり、それによって国の政策が決定されたりするなど、我々の生活と深く関わっています。試験を受ける立場としては、テスト得点の高低にばかり注意が向いてしまいがちですが、テストそのものについて考えたことはあるでしょうか。
易しく言えば、テストは、学力に代表される個人特性を測るために作られる道具、つまり、ものさし(専門的に言えば、尺度)です。適切に作られたものさしを適切に使わなければ、測定値は測りたい内容を適切に表すようなものになりません。ゴムで作られた定規でものの長さを測る、10cm定規で身長を測るといった例を考えれば容易に想像できるでしょう。私の研究テーマはまさに「教育を評価するための適切なものさしの作り方や使い方」です。種々の統計的手法やコンピュータによるシミュレーションなどを通して、尺度化のための統計モデルや実践場面に即したテストの実施法に関する提案を行っています。また、テストの実施に際して、ある条件によって有利/不利が発生するようなことがないかなどの観点から教育状況を把握するための調査を行っています。
教育測定学、心理統計学で用いられる研究法やデータ解析法に関する教育や助言を中心に、所属学生の学習・研究をサポートします。
2.教える側のインストラクショナルデザイン、学ぶ側の自己調整学習からより効果的・効率的・魅力的な教育と学習を実現する
インストラクショナルデザイン(Instructional Design;ID)は、何かをうまく教えるための技術と科学です。心理学やICT(Information and Communication Technology)を学問的基盤にもつ、教育工学(Educational Technology)の主要分野の一つとなっています。教える人が「このコースをどのように改善すれば、より効果的で効率的で魅力的なコースになるか」を考えるときの知見を提供します。一方、自己調整学習(Self-regulated Learning)は、学習者が自身のメタ認知、動機づけ、行動を調整しながら学習を進めていくことです。心理学や認知科学が主な学問的基盤となっています。学ぶ人が「自分の学習をどのように改善すれば、より効果的で効率的で魅力的な学習になるか」を考えるときの知見を提供します。
教育と学習は表裏一体のもので、どちらか一方の責任によるものではありません。IDでは、教育においての中心は学習者であるとする「学習者中心主義」、学習者に学習が生じたことによって「教えた」と呼ぶとする「成功的教育観」という基本前提があります。教える側はコースの学習目標が達成されたかに着目すること、学ぶ側は自分の学びに責任と積極性を持つことが、より良い学びには必要です。そこで、教育や学習において「どのような状況になっているのか」を把握し、「どのように改善・支援すれば良いのか」を評価・検証する研究をしています。
本研究室では、スタディスキル、アカデミックライティングスキル、心理学をベースとした研究方法(質問紙調査法、面接法、実験)や分析手法(量的分析、質的分析)のスキル向上のための支援を行っています。
- 心理統計学(Psychological Statistics)
- 教育測定学(Educational Measurement)
- テスト理論(Test Theory)
- 教育工学(Educational Technology)
- インストラクショナルデザイン(Instructional Design: ID)
- 自己調整学習(Self-regulated Learning)
- 量的研究(Quantitative Research)
- 質的研究(Qualitative Research)