研究室紹介

STEAM教育研究室

【担当教員】池田文人(教授),岩間徳兼(准教授),石川奈保子(助教)

STEAM教育を通じて創造社会を実現する


現代は,VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)の時代と言われます。はっきりした答えがないどころか,そもそもの問題も不明確です。つまりVUCA時代においては、問いを立てることが、答えを出すことよりも重要です。答えは問いによって規定されますが、問いは自由であるがために創造的です。言うなれば、これからの時代は自分だけの問いを立てることができる創造性が求められます。そしてそのような創造性を育む教育として、STEAM(Science, Technology, Engineering, Arts, Mathematics)が求められています。STEAM教育を通じてどのように創造性を育むか、その方法と創造性の評価方法について研究します。

研究テーマ

1.科学的な問いの創造と評価,そして社会での共有による創造社会を実現する


相対性理論の創始者であるアルバート・アインシュタインは、「もしも生死に関わる問題を1時間で解かなければならないとすれば、55分は問いの定義に使う」と言っています。また人文社会学に構造主義を導入したレヴィ=ストロースは、「科学者とは、正しい答えを出せる人ではなく、正しい問いを立てられる人だ」と言っています。問い(Reseach Question: RQ)は研究の本質だと言えます。しかし、問いを一から立てる方法も、問う力を測定する方法もまだありません。本研究では、研究すべき価値のある問いの創出方法と、問う力を評価する方法を考案し、創造的で質の高い教育を実現します。また、問いを社会的に共有することにより、創造的な社会の形成を目指します。

2.教育を評価するための適切なものさしを作り,適切な使い方を考える

教育効果や学習者の習得状況を把握するための方法としてテストがあります。誰しも一度は何らかのテストを受けたことがあるでしょう。確認テスト,定期考査,入学試験,学力調査の試験など,世の中にはたくさんの試験が存在し,その結果が個人の将来を左右したり,それによって国の政策が決定されたりするなど,我々の生活と深く関わっています。試験を受ける立場としては,テスト得点の高低にばかり注意が向いてしまいがちですが,テストそのものについて考えたことはあるでしょうか。

易しく言えば,テストは,学力に代表される個人特性を測るために作られる道具,つまり,ものさし(専門的に言えば,尺度)です。適切に作られたものさしを適切に使わなければ,測定値は測りたい内容を適切に表すようなものになりません。ゴムで作られた定規でものの長さを測る,10cm定規で身長を測るといった例を考えれば容易に想像できるでしょう。私の研究テーマはまさに「教育を評価するための適切なものさしの作り方や使い方」です。種々の統計的手法やコンピュータによるシミュレーションなどを通して,尺度化のための統計モデルや実践場面に即したテストの実施法に関する提案を行っています。また,テストの実施に際して,ある条件によって有利/不利が発生するようなことがないかなどの観点から教育状況を把握するための調査を行っています。

教育測定学,心理統計学で用いられる研究法やデータ解析法に関する教育や助言を中心に,所属学生の学習・研究をサポートします。

3.教える側のインストラクショナルデザイン,学ぶ側の自己調整学習からより効果的・効率的・魅力的な教育と学習を実現する

インストラクショナルデザイン(Instructional Design;ID)は、何かをうまく教えるための技術と科学です。心理学やICT(Information and Communication Technology)を学問的基盤にもつ、教育工学(Educational Technology)の主要分野の一つとなっています。教える人が「このコースをどのように改善すれば、より効果的で効率的で魅力的なコースになるか」を考えるときの知見を提供します。一方、自己調整学習(Self-regulated Learning)は、学習者が自身のメタ認知、動機づけ、行動を調整しながら学習を進めていくことです。心理学や認知科学が主な学問的基盤となっています。学ぶ人が「自分の学習をどのように改善すれば、より効果的で効率的で魅力的な学習になるか」を考えるときの知見を提供します。

教育と学習は表裏一体のもので、どちらか一方の責任によるものではありません。IDでは、教育においての中心は学習者であるとする「学習者中心主義」、学習者に学習が生じたことによって「教えた」と呼ぶとする「成功的教育観」という基本前提があります。教える側はコースの学習目標が達成されたかに着目すること、学ぶ側は自分の学びに責任と積極性を持つことが、より良い学びには必要です。そこで、教育や学習において「どのような状況になっているのか」を把握し、「どのように改善・支援すれば良いのか」を評価・検証する研究をしています。

本研究室では、スタディスキル、アカデミックライティングスキル、心理学をベースとした研究方法(質問紙調査法、面接法、実験)や分析手法(量的分析、質的分析)のスキル向上のための支援を行っています。

  • 疑問力(Question Intelligence: QI)
  • リサーチクエスチョン(Research Question:RQ)
  • 創造性(Creativity)
  • 動機付け(Motivation)
  • 認知科学(Cognitive Science)
  • 交流分析(Transactional Analysis:TA)
  • 深層学習(Deep Learning)
  • テスト(Testing)
  • 尺度化(Scaling)
  • 項目反応理論(Item Response Theory: IRT)
  • 構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling: SEM)
  • インストラクショナルデザイン(Instructional Design: ID)
  • 自己調整学習(Self-regulated Learning)
  • 科学コミュニケーション(Science Communication)